読者の皆様、残暑見舞い申し上げます。
 7月の日本でのコンサートツアーが終わり、先週ミュンヘンに帰ってきました。蒸し暑い気候から離れたと思っていたら、実はこちらも今年はかなり暑いのです。かき氷はないのでアイスクリーム屋さんにとことこと行って頼んだら、ワッフルの上に乗るアイスクリームの大きさに胸が躍りました。ワッフルに乗ったバニラとアマレットのボールはまさかきちんと丸い形をしているわけではなく、ボールを作るスプーンからかなりはみ出た部分もドン、ドンとワッフルの上に重そうにのっています。ワッフルの部分より少し多い感じのアイスクリームが舌をどんどん刺激するこの味わい。これこそこっちのアイスクリーム。
 この話がどう文化とつながっているか…一見、まったく関係ない話です。ただ日本のメンタリティを考えると、ボールがどのくらい綺麗に見えるか、きちんとワッフルに乗っているかが大事だと思われてないでしょうか?
 音楽でも何だかきちんと、綺麗に弾くことが大事にされているような気がします。ちょっとしたミスを気にしたり、メロディーが常にくっきり聞こえないととか…。う~ん、でもこのアイスクリームのように大胆な音楽が聴きたいと思われる方もいらっしゃるでしょうか? 少し荒く、激しく、でもなんだか濃くて、人間の汚い部分もグサグサと訴えてくるような音楽…人間くさくて、これこそ本当のことを語っているような印象を受ける音楽。
 話がそれてしまいましたが、ドイツの熱い日差しの中、そんなことを考えて散歩して、涼しい森を通って、家に帰ってきて、次の録音の準備をする毎日です。今度のCDはベートーヴェンのソナタの中でも最も「自然」を感じるものを選びました。鳥の鳴き声、湖の美しさ、青々とした森が想像できる場面の合間に、嵐が襲ってきます。それは、人間のあらゆる感情の例えのように、優しさや喜びが表現される中、痛みや苦しみが襲ってくるようです。そんな深い音楽を残してくれたベートーヴェンも夏は暑くてビールを大量に飲んでいたのでは、とふと思いました。