情熱のカデンツァ

『情熱のカデンツァ』は演奏旅行や音楽についての初めてのエッセイです。演奏会でのハプニングや 指揮者、調律師の方々とのやりとりなどを含めた旅日記、そして、私の音楽への思いや趣味、日本とドイツで感じてきた様々なことを綴りました。音楽は言葉の 壁を越え、人々の心を結び付けられるかけがいのないものだと思います。皆様に音楽の楽しさと深さをお伝えしたく、私の音楽への愛情を文章にしてみました。
オーケストラと共演するコンチェルトの最後に、ソリストがひとりで演奏するカデンツァという部分があります。このカデンツァは、作曲家が書いてない場合 は、ソリストが自分で作曲をしたり即興で弾いたりするもので、いわばオーケストラから離れた「ひとり旅」となります。私たち音楽家は常に自分なりの音楽の 真実、すなわち至上の自分だけの音を追究するたびを続けているようなもので、私はいつもそのひとり旅の真っ最中なのです。 (「本文」より)