「心」が感じ取る音の調べ 2018/9

もうすぐ行われる私のリサイタルシリーズ「Four Elements(フォー・エレメンツ)」の第2回のテーマは「火」ですが、作品のセレクションは困難を極めました。

   テーマに基づくストーリー性が感じられるように、作曲者同士の関係や国柄、歴史などを調べるのが私は好きなのです。しかし、そういう関連性や時代などの背景とは別に、お客さまが楽しめるような流れを作らなくてはなりません。

   「火」について連想すると、情熱、花火、悪魔など、どうしても激しいものに偏ってしまいます。なので、テンポの速い、大音量の作品だけにならないよう、暖炉や炉端(ろばた)のような暖かいテーマの作品も探しました。

   速く、激しい作品が続くとお客さまも最初は興奮しても、疲れてしまうでしょうし、ゆっくりで暗い鬱(うつ)な作品ばかり弾いても気分が悪くなってしまうかもしれません。その辺のバランスは公演プログラムを考えるときに欠かせません。

   そもそも、人々はどうして音楽からあらゆることを感じるのでしょう。

   音楽は、音と音の重なり合いによる構築で成り立っています。ハーモニーやリズム、メロディーの動きによって、悲しい、うれしい、楽しいといった単純な感情はもちろん、生命の誕生や宇宙の巨大さ、死の恐怖といった壮大なことまで考えさせられます。

   それは人間の脳がもたらす錯覚に過ぎないのでは…と、われにかえって思うこともあります。人を好きになる時に感じる感覚も、人間の「心」の動きではなく、脳と体の絶妙な反応だけなのかもしれません。

でも、そういう印象がいくら錯覚だとしても、人間の感性は水や火のように欠かせないものだと思います。もし何も感じなかったら良心も生まれないでしょうし、人生だって楽しめないと思います。

   音楽に対する感動がなくなるなんて想像したくもありません。したがって、私は「心」の存在を信じたいのです。