個性ぶつけ合い生まれる尊重と協調 2018/5

この何週間か旅が続きました。イスラエル、オーストラリア、アメリカ各地のおいしい食べ物やワインももちろん堪能しましたが、特に印象に残ったのは人々との出会いでした。

   世界の音楽家を相手に共演するとき、まず自分の考えをはっきり持つことが大事だと思います。このツアー中、それぞれ自分の意見をはっきり持った各地の音楽家たちと、個性を真正面からぶつけ合うことに楽しみを感じました。

   まず、こういう音を出したいとか、それぞれのイメージが頭にすでにあり、それを伝えることから始まります。そのためには知識も必要で、作曲家がどこでどういう思いでどんな景色を見て書いたなど理解するだけで音楽が変わってきます。

   言い合いになることがあっても、なるほどそういう考え方もあるか、と納得することもあったりして、だんだんと音楽に方向性が表れます。そうしたうえで、一人一人の個性を尊重しあい、共通点を見つけることも覚えるわけです。

   そんな中、共演だけではなく、人情がこの仕事を支えます。イスラエルでは宗教的な休日にも関わらず、家族のディナーに招いてくれたり、私と同じくドイツ在住の共演者が、旅が続くのに鞄(かばん)が重いのを心配して、公演後もう必要のない楽譜を先に持って帰ってくれたり、オーストラリアでは道中で撮影したカンガルーの映像をみんなでシェアしたり、色々なことから友情が生まれ、共演も一層楽しくなりました。

イスラエルではホロコースト(ナチスドイツによるユダヤ人の大虐殺)のメモリアルデーがありました。一定の時間に急にサイレンの音が流れ、その3分間の間、車も歩行者もすべて止まり沈黙します。

   普段は明るいテルアビブで急に残酷な歴史について考えさせられながら、人間にはレッテルを貼ることなく、お互いを尊重しあう世の中が必要だと改めて思わせられる瞬間でした。