高畑勲監督が残してくれた生きる力 2018/4

幼い頃は別れというものの意味がよく分からなかったのに、大人になるにつれ、長年親しかった人との別れも増えてきている気がします。

   知人でなくても、尊敬する音楽家が亡くなると、もう二度とその人の演奏を聴くことができないのか、映画監督だとこの人の映画は二度と見られないのかと思うと勿論(もちろん)、悲しい気持ちになります。

   しかし、その人たちが今まで残してくれたものをもう一度思い出すと、どれだけインスピレーションを与えてくれたかが分かってきます。

   先日、高畑勲監督が亡くなったときも、何回も見た「火垂るの墓」や、映画館で見て呆然(ぼうぜん)とした「かぐや姫の物語」が浮かんできました。

   多分私が歳をとったらまた違うことがわかったり、感じられたりするのだと思いますが、「かぐや姫-」を見たとき、その絵の美しさと、素晴らしい音楽の使い方に感動すると同時に、あらゆることを感じたのを覚えています。

   人間の愚かさ、親の愛情、幸せの価値観、命の儚(はかな)さ…。すべてがここで語られていて、でもユーモアもあって面白く率直に伝わってきます。私は日本人であるというアイデンティティーは感じていますが、幼いころからドイツに行ったので、メンタリティーや道徳が日本で育った日本人とは違うかもしれません。

しかし、この映画を見て、日本古来の純情な美しさを再認識しつつ、人間の幸せとは、単純な一瞬一瞬を大切に、そして自分自身に忠実に生きることにあるのでは、と気づかされました。

   そして、最後のかぐや姫の言葉には心に訴えてくるものがあります。「喜びも悲しみも、この地に生きるものはみんな彩(いろどり)に満ちて! 鳥、虫、獣、草木花、人の情けを!」

   かぐや姫のように、天人に導かれても、私たちの心の中で生きている多くの人々の存在こそ、私たちに生きる力を与えてくれているのだと思います。