楽しみな大さんの新作ピアノ協奏曲 2018/3

何百年もの音楽史の中で、今までになかった新しい作品を作るのは難しいように思えてきます。それでも、これまでに聴いたことのないような世界を作れる作曲家が世に出てきてくれるのは、演奏家にとってとてもありがたいことです。

   英ロンドンの名門、ウィグモア・ホールで2月、世界的に注目を浴びる作曲家、藤倉大(ふじくら・だい)さんの個展コンサートに参加させていただきました。昨年、管楽器との五重奏の公演ツアーをした際、大さんに委嘱(いしょく)し、アンサンブルのみんなとほれ込んだ素晴らしい五重奏曲「Go」のイギリス初演を行いました。

   実は大さんとは、交流サイトの「フェイスブック」上でお互い大好きなゲーム「ドラゴンクエスト」の話で盛り上がり、仲良くなりました。ドラクエ好きの音楽家同士で一緒に焼き肉屋で大声で戦闘シーンのテーマを歌ったりして追い出されそうになったことも。

   同時に、私のベートーベンの録音を全部聴いてくださり、私も彼のオーケストラ作品などを公演で聴きに行ったりして一緒に仕事をしたくなり、今に至ります。

   大さんは演奏家が持ってくるアイデアや演奏に喜んでくださいます。でも作曲家本人とお話しすると、こちらもやはり新しい発見があります。たとえば、管楽器4人は波のようにトレモロを弾いていますが、私は全く異なるフィギュアを弾いているところがあります。そこを大さんは「ある3Dのオブジェがあって、その周りを液体が浮き上がったり、沈んだりしている。そういうのってセクシーじゃないかな」と説明してくれました。大さんの並々ならぬ想像力にインスピレーションを受けたひとときでした。

   実は10月に大さんの新しいピアノ協奏曲を世界初演させていただきます! ピアノ協奏曲という形で、お客さまにどんな新しい音楽の世界をお届けできるのか、楽しみでなりません。