国境超え感動を共有する喜び 2018/2

寒さも増してきたこの冬、モスクワから飛行機で2時間、ロシアで最も大きい都市の一つで、ウラル連邦管区のスヴェルドロフスク州の州都エカテリンブルクに到着しました。

   到着した夜の気温はマイナス18度で、地元の人は結構、薄いコートで歩いているものの、顔を帽子で覆わないと痛いのが現状です。

   ロシアにはオーケストラとの共演などで何回か訪れました。私はロシア語ができないので、心を開いてくれるまで時間はかかりますが、良く知ると深く温かい人々に出会い、感動した思い出がたくさんある場所です。今回は初めてのリサイタルでした。

   ここのスヴェルドロフスク・フィルハーモニーでは、音を出した瞬間、今までに感じたことのない空気を感じました。音が自分に返ってくるとき、音の一つ一つがシャボン玉に入って浮いて飛んでくるような、そんな感じです。

   ピアノ調律師のお兄さんとピアノの音そのものについて語り合ったり、私の作りたい音を伝えたり、面白い意見の交換が続きました。

   彼はピアニストでもあり、私が客席側でどう響くか分かるよう少し弾いてくれました。おかげで、どんなに弱い音を出してもホールの後ろまで輝きをなくすことなく届くことなど、強弱の限界がわかりました。

ロシアではクラシックのコンサートでもアナウンサーがいて、作品を一曲ごとに説明してくれます。今回、武満徹(たけみつ・とおる)の「雨の樹 素描」のIとIIという曲を弾きました。映画が大好きだった武満氏が旧ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーが好きで「惑星ソラリス」の水の魔力について語っていたことなどをアナウンサーの方に話したら、それもそのまま聴衆へ伝えて下さいました。

   神秘的な武満さんの作品が終わり、数秒の沈黙のあと、たくさんのブラボーが出たとき、国境を超えて音楽を共感できたことに、胸がいっぱいになりました。