特別な瞬間が訪れるモーツァルト 2017/9

「音楽と、夢に向かって」歩いてきて、読者の皆さまとここで私の考えや経験をシェアできることは本当に光栄です。

   「夢に向かって」といっても、振り返れば、どの経験も夢の実現の一つであり、それぞれが未来への道へとサポートしてくれているように感じます。

   あっという間に今年も後半に入ってきましたが、夏の最後は、弾きぶり(ピアノを弾きながら指揮をすること)の公演がありました。弾きぶりをするのは今回で2度目。子供のころから向き合ってきたモーツァルトの協奏曲を2つ演奏しました。

   モーツァルトの時代には弾きぶりで演奏することが日常だったそうです。指揮者がいないので負担が大きいのですが、オーケストラと直接コミュニケーションがとれることは大きな喜びです。

   ただし、自分が弾くだけでなく、オーケストラにも音のイメージや曲想などを伝えるのは難しいことです。

   モーツァルトの作品はオペラのようで、ときに切なく、ときに喜びにあふれ、ときに懐かしいなど、あらゆる感情が一瞬のうちに入れ替わり、オーケストラとピアノの会話は絶妙な調子で繰り広げられます。ちょっとした弾き方の違いでその世界は変わってきます。私のたどたどしい説明や、ピアノの演奏からやりたいことを読み取ってくださるオーケストラには本当に感謝しています。

本番でモーツァルトを弾く際は、いつも特別な経験だと感じています。独自の世界の中で、共演者と私を一体化させ、さまざまな思い出や考え、そして今まで感じたすべての感動が一気によみがえり、お客さまに伝えたいことが噴水のようにあふれる瞬間がそこにはあるのです。

   どんなに難しい道のりが待っていても、天才モーツァルトの作品には勇敢に立ち向かわねばと思わせられます。今回もそのような公演を味わうことによって、また一つの夢がかなったと思いました。