ソリストとしてのコンサートが続くと何だかさみしい心境になります。そんなとき、室内楽のコンサートが予定に入っていると、やっと仲間に会えるのが楽しみでなりません。ソリストはずっと一人でがりがり練習してればいいというわけではまったくありません。深い、音楽性の豊かな音楽を作っていくために、他の楽器からのインスピレーションや一つ一つのフレーズの対話がかかせません。
 10年前に芸術と科学の分野の人材を支援している「S&R財団」に「ワシントン賞」をいただいてから大変お世話になっている縁で今年5月、「Evermay(エバーメイ)」というS&R財団の本拠地でありワシントンの歴史的建築の中で質の高い室内楽を紹介するという「エバーメイ・室内楽プロジェクト」の初開催に招待されました。
 同じく受賞者の川久保賜紀さんと、彼女の声掛けで集まった素晴らしい音楽家たちと一緒に3つのコンサートを弾くだけではなく、エバーメイに泊まり、リハーサルを含めて1週間過ごすのは、とても楽しいひとときでした。前にもどこかで共演した仲間たちとの再会は愉快で、ここのシェフのマコトさんの料理は本当に最高。まるで遊びに来たようですが、リハーサルのときは皆演奏をよくしようという気持ちでいっぱいで、ものすごい集中力。私達のルーツは南アフリカ、ウルグアイ、ペルー、ルーマニア、韓国、日本…こんなにインターナショナルですが、ドイツ語、英語と日本語がいつも聞こえると同時に、音楽という共通の言葉が流れます。
 コンサートでは、その場の空気を感じ五感を研ぎ澄ませてお互いを聴き、感じとり、しかけたり、答えたりの対話と、表情豊かなパッセージがそれぞれの個性と一緒に奏でられました。
 私達の音楽に寄せる愛情が音楽によって語られる瞬間、一つのことを一緒に極め、求めることによって生まれる幸せを感じました。一人ではできない、皆の力によって創造される音楽の魅力を、これからもお客様に伝えていきたいと思います。いつか自分の室内楽フェスティバルを作りたいという夢に向かって…。