矢代秋雄氏の偉大さに触れて 2017/1

ピアニストとして、音楽史に残る世界各国の作曲家に触れています。そして、日本の作曲家の中にも尊敬すべき人が存在することは本当にうれしいことです。

   昨年の12月から新年にかけて、14日に東京・サントリーホールで開く演奏会(指揮・秋山和慶氏)で演奏する矢代秋雄(やしろ・あきお)氏のピアノコンチェルトの準備に取り掛かっていました。

   矢代氏は日本を代表する20世紀の作曲家の一人。しかし、昭和51年4月9日に46歳という若さでこの世を去ってしまいました。

   現代曲というのはややこしいとか、分かりづらいと思われがちです。でも、この協奏曲をどんどん探究していくと、普段聞き慣れないハーモニーの中に優しく繊細な美しさと心に突き刺さるような激しい感情が感じられます。その不規則なリズムには独自なユーモアと弾力性があり、弾いていて、すごく楽しいのです。

   矢代氏の奥さまに前もってお会いして旦那(だんな)さまのお人柄についても教えていただきました。とてもお好きだった仏の画家、ギュスターブ・モローの絵画の話や、実は美食家だったといったお話を聞いていると親近感がわいてきました。

後世、たくさんの素晴らしいお弟子さんを残された上、数々のエッセーや対談などを読むと、音楽に対し深い愛情も持っておられます。そして、音楽史上のあらゆる分野で計り知れない研究をなさっていたことが言葉の一つ一つから伝わってきます。

   やはり、偉大な音楽家は芸術にかけるための覚悟、そして、愛するものに対する探究心と研究の深さが半端ではないと感心しました。

   音楽というのは、ただ音を追うのではなく、個々の音を裏付るものが何であるかを考える。それとともに、過去に残された多くの傑作群やそれらを手掛けた人々への尊敬の念を忘れないことで、新しく素晴らしいものが生み出されるのではないかと、つくづく考えさせられました。