作曲者に出会って演奏できる喜び堪能 2016/9

演奏家は作曲家の書いた作品の伝達者であるということに関し、私はもどかしいと思うことがあります。

   既にこの世にいない作曲家の作品を演奏しているので、その人はどんな人で、どんなことを考えて曲を書いたかは、残された楽譜や本などを頼りに想像するしかないのです。仮にベートーベンやモーツァルトに会ったら想像と突拍子もなく違っているのでは…とさえ思うこともあります。

   しかし、8月末に現役の作曲家の素晴らしいピアノ協奏曲を演奏する機会がありました。マグヌス・リンドベルイというフィンランドの作曲家です。現代作品を演奏するときは必ず作曲者に会っているので、今回もヘルシンキにはるばる会いに行きました。

   ヘルシンキはなんと、真夏なのに涼しく、20度以下。その日はフィンランドでの彼のオーケストラ作品の初演日で、私が演奏を氏に聴いてもらえるよう、オーケストラのマネジャーの方がピアノのある部屋を取ってくださいました。

その部屋にはセンサー付きの照明が付いているのですが、これが省エネ目的なのか、15分ごとに勝手に消えるので、その都度、センサーを反応させるべく、2人で笑いながらジャンプしていました。面白くて緊張も吹き飛びました。

   ピアニストでもあるリンドベルイ氏は、くま手のような巨大な手の持ち主で、和音の幅がどうして大きいか分かりました。書いていることだけでは分からない微妙なテンポやバランスが彼の説明で伝わり、「アクティブな休符」とおっしゃるように、生き生きとした緊張感の保ち方などとても興味深く、作品がどんどん自分の中でクリアになりました。

   夜もオーケストラ作品の初演を聴くことができ、たくさんのインスピレーションを受けて公演に向かうことができ、とても幸せでした。作曲者に出会って直接質問できたことで、いつも望んでいた夢がかなったようなうれしいひとときでした。