伝説のドラマーが刻む心地良いリズム

いつも、どこかで鼓動が聞こえてきます。このバク、バクという音は心臓でしょうか。パルス、鼓動はベートーベンを弾いていても不可欠だと思いますが、心地の良いリズムというのは何なのでしょうか。

 オーケストラと共演するとき、ティンパニーにいつもあこがれます。ティンパニーの刻むリズムは全体を支えるような役目を持ちながら、時には速度の変化だけとはいえない歌のような人間的なものを感じ、それは音楽を、より豊かにすると思います。

 つい最近、友人の勧めでジャズ界の伝説のドラマー、スティーブ・ガッドを「YouTube」で聴いたとき、「これこそ心地の良いリズム感だ!」と、衝撃を受けました。

 見せつけることのない、シンプルなリズムでも音の変化があり、常に心臓の音のようなレギュラーな鼓動が体に自然と響いてくる。そして、わざとらしいところは何もなく、徐々に、徐々に盛り上がっていき、知らない間に微妙に速くなっています。そして、発狂するようなクライマックスの後、また、完璧にシンプルなリズムに戻るのです。

先日、ちょうど日本に滞在したとき、スティーブ・ガッドのライブが東京であることを発見! これは聴き逃してはいけないと思い、駆けつけました。全く年を感じさせない生き生きとした演奏で、この素晴らしいリズム感をライブで味わうのは、たまらない時間でした。

 音の奇麗なことと、必ずどのドラムもクリアに刻んでいること、そして、自然体そのものであること。音楽家として見習うところがたくさんありました。

 終わってから、友人と一緒にキャー、キャー言いながらサイン会にも並ぶことに。久しぶりにサイン会に自分が並んだことによって、お客さまの心境がよく分かりました。緊張してほとんど何も話せなかった私は、もう握手できただけで最高に幸せでした。