ドイツでオペラを聴く楽しみ

久しぶりに大好きなミュンヘンのオペラハウスに行きました。音楽監督になってから、もう1年になるキリル・ペトレンコの指揮で聴くのは初めてで、楽しみでなりませんでした。

 予約した席は最上階。いつもは階段で上がっていくのですが、その日はエレベーターにも一度は乗ってみたいと思い…。そこに入ってきた杖(つえ)をついたおばあさんは、常連さんという雰囲気。一緒に来ているおばさんたちに「私は30年、ここに通ってるのよ。音が良いからいつも最上階」と言っているのが聞こえました。私も同感!と思い、つい、にやけてしまいました。

 ミュンヘンの人々が大事にしているオペラ。新しい音楽監督に対してどんな反応をするのかと思っていたら、なんと、彼が出てきた途端に「ブラボー」の連発。まだ演奏も始まっていないのに騒ぐ聴衆。かなり良い評判のようです。

 ペトレンコの指揮する音楽は熱い。一音一音に魂を込めてタクトを振っていても流れを崩さない。真正面からアタックしてくるような感情的なオーケストラの響き。たった1年でミュンヘンのお客さまの心をつかんだ理由がよく分かりました。

 ここのお客さま一人一人には独自の個性があります。1人で来る常連のおばあさん、シュトラウスばかり聴きに来る人。ここへ来ると、他のお客さまとのコミュニケーションがあるので気になるのです。

今回も、後ろの席の人に「舞台が見えなくなるからあまり前かがみにならないで」と言われて気をつけていたら、休憩中にとても感謝され、オペラが終わった頃には「では!」と握手するまでになりました。これは、この劇場ではごく普通なことです。

 ドイツでは小さい町にも「町の劇場」があり、チケットの値段もそう高くなく、住民に親しまれています。地元の劇場を誇りに思い、定期的に通うことで大事にするということから、人々の温かさと素直な気持ちが伝わってきます。こんな習慣を日本にもつくってみてはいかがでしょうか?