音で語り合う合奏の醍醐味

この2カ月間、アンサンブルの公演が続きました。ソロの一人旅と違って、前回共演した仲間との再会や新しい出会いが楽しみでなりませんでした。

 アンサンブルというのは協調性も必要で、お互いの音を聴くだけではなく、意見やアイデアを聞き合うことも大切です。楽器が違うと音の出方や呼吸の仕方も違うので、分かり合えないと一緒に気持ちを合わせるのも困難になってしまいます。ただ「合わせる」ということよりも、音楽を言葉のように自由に語り合うようにすることが本当の楽しさであり、生き生きとした室内楽につながるのではないか、と思います。

 多分、私たちのリハーサルを全く違う職業の人が聞いたら何をしゃべっているのか理解しづらいというか、宇宙から現れた不思議な種族のように思われるかもしれません。

 「ここのハーモニーの前に何かがほしい」と誰かが言うと、皆が納得したようにうなずいたり、「このテーマに戻ってくるところがまだ家に戻った感じがしない…」と言った後、ただ皆で家に戻る感じを出そうとしただけでそういう音楽になったり…。

 でも、そんなリハーサルが連日繰り返された後、コンサートで今まで話したことを忠実に弾くかというと、そうでもないんです。リハーサルしたところは身にしみていて、アーティストが本番で個性を出し切って、お互いを聴き合い、音楽を感じてエネルギーを出し切ったときの爆発力は半端ではありません。そういうときに現れる、誰も語る必要のないピアニシモの瞬間があると、「ああ、音楽家で良かった」とか、「このためにアンサンブルをしているんだ」と感じます。

 たくさんのインスピレーションを受けた後のソロリサイタルは、もちろん緊張感は増しても音楽の楽しみも増したような気がします。