熱くて家族的、素敵な音楽祭

5月は一番好きな月。ドイツもやっと暖かくなり、たくさんのつつじがにこにこと笑い、気持ちが明るくなる季節です。でも5月末にはリサイタルを控えていたため、練習で「缶詰め」状態の毎日でした。

 リサイタルはテュービンゲンという、ドイツのシュトゥットガルトから電車で1時間の町で行われました。新しい音楽フェスティバルの中での公演です。

 最近、移動にはよく飛行機を使っていたため、久しぶりにドイツの電車に揺られて公演に向かうのはなんだか楽しく、ベートーヴェンの「ハンマークラヴィア」ソナタという恐ろしく難しい曲を初めて弾く恐怖も、景色の美しさのおかげでふっとんでしまいました。

 ほぼ1000年も歴史があるこの町は、ヘルダーリンやメーリケも住んでいたことがある大学都市です。旧市街の建物やネッカー川はとてもきれいで、散歩をするのも昔に戻ったような特別な雰囲気がありました。

 フェスティバルのスタッフは全員若く一生懸命で、熱意が伝わってきました。とても家族的で、公演当日はディレクターの実家で朝練習と昼食をとって会場に移動。会場も歴史的な建物で、木の香りと石の響きのふんわりとした音響に囲まれ、落ち着いた空気が漂っていました。開始時間は午後8時過ぎごろ、好きなときに自由に始めればOK。のんびりできるので安心しました。

 難しい曲続きでも周りのサポートのおかげであまり緊張もせず音楽に集中できて、気持ちよく弾くことができました。一つ一つの公演に愛情がこめられているこのフェスティバルの発展を心から応援したいと思いました。