今年の春は充電の季節に

公演が1カ月以上続くと、緊張感と興奮のせいで急に体力的にも精神的にも疲れている自分に気づきます。先月も冬が終わっていたことにも気づかず、無我夢中で旅をしていました。

 コンサートは自分自身を一番表せる場だと思いますが、人前で話したり、パーティーなどの公の場に出ると、おっちょこちょいの私は思うように話せなかったり、必要以上に緊張してしまったりします。そんな私にとって家に帰って一人で考える時間、息抜きをする時間、散歩する時間は、とても大切な時間です。

 料理は私の大好きな息抜きの一つです。自分の好きな材料を買ってきて適当にフライパンにほうり投げ、刺激がほしいときは、チリをどっさり入れます。夜はワインを飲みながら今だに好きな「Xファイル」のDVDを出してきて見ます。そして宇宙人の夢を見て、次の日の朝、バッハの練習で一日が始まります。

 家の近くの森のおいしい空気を吸ったところで、生きている実感が湧いてきます。特に春は、新しい草や葉の匂いがして、たくさんの鳥の鳴き声とともにさわやかな風が揺らいでいて、その自然な光景のおかげでくだらない悩みも心配も頭から吹っ飛んでしまいます。

今年は少し日本の春も味わうことができました。梅林公園のくっきりとした元気な枝にささえられているたくさんの梅の花は、甘い香りがしました。それに比べて桜は、可憐(かれん)でふわふわと浮かんでいるようです。でも長く眺めていると、今、この短い瞬間しか見られないという思いで、生命の儚(はかな)さを感じます。

 春は私の一番好きな楽しい季節ですが、今年は、次の公演に向けて充電する時期のようです。