音楽からはいつもインスピレーションを受けています。昨日あるベートーヴェンのピアノ・ソナタを練習していたとき、悩んでいたことが重なって我慢できなくなったのか、急に涙が溢れてきました。音楽というのは押さえていた感情を一気に露わにし、まるで沸騰したように爆発させ、作曲者の痛み、喜びや感動は過去の真実として私に伝わってくるのです。
私は小さい頃から音楽と向き合ってきました。練習がいやでも我慢した日々、好きでしょうがない曲をいつまでも弾いていたかった日々、演奏に満足しきれなかったコンサート、たくさんの音楽家と素晴らしい音楽を共有した瞬間、ポジティヴとネガティヴな思い出があります。でも音楽への愛情はずっと変わらず、人生のどんな壁も音楽が乗り越えさせてくれました。

今年30歳になりますが、なんだか今までの時間があっという間に流れてきた気がします。人生の一刻一刻を楽しんで、自分の次の目標を達成できるように時間を大切に使わなくてはと常に思います。でも最近、雑用に追われ、無感覚になっていく自分にはっと気づき、時間を無駄にしてしまっているのではと心配になることがあります。よく音楽を通じて人生の意味を考えますが、音楽家の私が世の中のためにできることは何なのか、よく悩みます。

そんな時コンサートを聴きにいくと、明日はもう一度音楽と正面から向き合おうという気持ちになるのです。私の原点は何なのか。本当に素晴らしい音楽家の演奏は、最上階の最後列に座っていても、強烈に心に訴えてきますが、その一瞬だけしか味わえない純粋な音楽の力に魅了され、今の自分があると思います。
人間としても成長しなければ音楽も成長しません。今の世の中は表面的になりつつあると感じますが、経歴や名声よりずっと大事なことは、曲のメッセージを追求し、お客様に自分の全てを届け、音楽によっていろんなことを考えていただくことではないでしょうか。

未来は自分で作るもの。毎日変化している世の中で、大切な時間をできるだけいいことに使えるよう、前を向いて生きたいと思います。